ボクたちはみんな大人になれなかった

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2021年 日本

監督:森 義仁

出演:森山未來 / 伊藤沙莉 / 東出昌大 / SUMIRE / 篠原篤 / 平岳大 / 片山萌美 / 高嶋政伸 / ラサール石井 / 大島優子 / 萩原聖人

 

これは俺の映画だ。

久々にやられた。あの頃の俺の黒歴史をほじくりかえすのはやめろ。これ以上俺の黒歴史を思い出させないでくれ。

 

思い当たる節がたくさんありすぎて、主人公に自分を投影してしまった。どっぷりとタイムスリップした感覚になった。たぶん同世代っていうこともあるんだろう。僕もこの主人公と同じ40代前半の年齢なので時代背景がドンピシャすぎた。

我々の世代は「氷河期世代」と呼ばれてまして、バブルの恩恵も受けずに不況の煽りを受けた損な世代なんです。だから少し上の世代のバブル世代とはウマが合わないし苦手なんです。

タイトルのとおり自分も、大人になった実感はいまいち無いまま40歳を過ぎてしまった。子供の頃は40歳なんてオッサンもオッサンで、当然大人だと思っていたんだけど、子供の頃思い描いていた大人にはなってない。もしかしたら「大人」とは子供が空想した架空の動物だったのかもしれない。

20年前の90年代後半から2000年のはじめ、僕が20代前半だった頃、ファッションとか音楽とかカルチャーに敏感じゃないといけないみたいな強迫観念にかられていて生きづらかった感じとか、「君のファッションってみんなとおんなじで普通だね」とか、彼女に言われるシーンが辛かった。しかもそのとき着ていたシャツがポールスミスだったのが絶妙だった。当時ポールスミス死ぬほど流行ってたんだよ。

俺も20代の頃ちょっとセンスの良い趣味をもった彼女と付き合ってて、彼女に影響受けてファッションとか音楽とかカルチャーとかに背伸びしてた時期があったんだけど、でもそれって単にその時代サブカルが流行ってたってだけで、いま考えたら全然ミーハーな男女だっただけなんだよな。全然普通だったのに、自分たちは人と違うんだと勘違いしていたことに、自分が40代になってようやく気がついた。いや、この映画を観たことで気がついたんです。この映画のおかげで自分が普通だったってことに気がついた。

気がついたことに気がついたんです。

久しぶりにエグられる映画を観た気分です。この余韻しばらく続きそう。

それにしても、森山未來がすごかった。あの人、年齢不詳すぎてすごい。20年前のシーンとか、本当に20代の人に見えて凄かった。

そして、オザケンの音楽が絶妙だった。音楽って聞いただけで当時の記憶がタイムスリップするように蘇る。音楽の力ってすごい。