震える舌

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1980年 日本

監督:野村芳太郎

出演:渡瀬 恒彦 / 十朱 幸代 / 若命真裕子 / 中野良子蟹江敬三

 

めちゃめちゃ怖い映画だと評判なのが気になって気になって。しかし、観るのをずっと躊躇していた。なんか本能的にヤバイ気がして。

 

たしかに、これはキツイ。トラウマを更新した。

拷問ですねこれは。

 

5歳の子供が破傷風という病気になり、入院するんですけど、定期的に痙攣をおこしてしまうんです。痙攣をおこすときに、口が開かなくなるだけど、舌を噛んで口が血塗れになってしまうんです。その発作がとにかく怖くて怖くて。心配で目が離せないんです。その発作は光や音に過敏に反応してしまうので、病室は暗幕で暗くし、音をたててはいけない。ちょっとでも刺激を与えると、痙攣をおこし舌を噛んでしまう。そのたびに子供は金切り声をあげて絶叫するという。

家族は暗い病室に隔離されて、子供が苦しんでいる姿をずっと見守っていないといけない。気が狂いそう。というか気が狂った。

 

これ、いわゆるソリッドシチュエーションスリラーですよね。SAWとかCUBEとか、限られた空間のなかでいかにして助かるかって映画なんです。

 

医者はもちろん最善をつくしてくれてますけど、「大変だと思いますが…油断しないでください。」と随所にプレッシャーをかけてくる。ちょっとでも油断して発作が起こってしまうと、「油断も隙もありゃしない!ちゃんと見ていてください!」と怒られる。

旦那さんが奥さんに「お前は一旦帰って休んでいろ、ここは俺が見てるから…体がもたないぞ」と奥さんを気遣っても、「帰れる訳ないじゃない!」と。そんなこと言われたら旦那も帰るわけにいかないから、二人で見守っていないといけないんだけど、どんどん夫婦が追い詰められていくんですよ。そりゃあ追い詰められるよ。だってどうしていいか分かんないんだもん。暗い病室に閉じ込められて、娘はずっと苦しんでいるし、不定期に発作が起こって絶叫しながら舌を噛んで血塗れになって、その度にあたふたしながら医者を呼んで、医者は「大変だと思いますが、頑張ってください」的なことしか言われない、そのエンドレス。

 

いや、こっちも看病するけどさ、病院側の家族に対するケアがちょっと足りなくない?

 

あと、舌を噛まないようにマウスピース的なものとかないんですかね…?全然安静にならないけど、薬が切れるまで寝ないで見守らないといけないんすか? ちょっと効率が悪すぎる気がしません? というか、入院したときって、こんなに家族が治療のために最前線で看病しないといけないんでしたっけ!??

 

しまいには奥さんノイローゼになっちゃって、頭おかしくなって果物ナイフを持って暴れたり、「産まなきゃ良かったのよ!!」とか言い出すし、もうこの家族終わったって絶望しましたよ。

もうずーーっと張り詰めた緊張感がエンドレスな映画だった。こんなに辛く疲労した映画は無いですよ。

しかし、世の中にはもっともっと大変な病気をかかえて苦しんでいる人たちが実際にいることを考えると、この過酷さは決して大袈裟ではないのかもしれない。

難病に苦しんでいる娘を看病する親の苦しみを擬似体験させられる映画なんだと。最後観終わって考えさせられたし、強烈に心に残る映画でした。その辛く苦しい部分だけをフォーカスした結果、ものすごい怖いホラー映画だったという。