ばるぼら
2020年 日本
手塚治虫の「ばるぼら」という漫画が原作の映画ということですが、
正直微妙でした。
原作も未読だし、特になんの前情報もなくきまぐれに映画館に行ってしまったもので勝手なことを言って恐縮ですが、正直な感想です。
全体的にステレオタイプなんです。「カッコよさげ」「怪しげ」「狂気っぽさ」と、どれも「っぽさ」なんです。出てくる登場人物が全員なんかカッコつけてるのが気になって気になって。全員演技が臭いんです。そして稲垣吾郎が稲垣吾郎にしか見えなかった。
映像もカッコよさげで、カッコよさげなジャズが流れたりしてるんですけど、その演出も古いというか。ベタすぎるというか。すごく極端に言うとカラオケのイメージビデオみたいな安い演出なんです。
「新宿の繁華街で黄昏ながら歩いてジャズ流しとけばOK」みたいな無意味なカットが多すぎる。フランス映画とかでありがちな「意味深だけど何の意味も無い雰囲気のあるカット」が、ただただ無意味だなーって思って見ていました。
そんなことより今回、稲垣吾郎も二階堂ふみも、かなり体を張っているんです。濃厚なラブシーンや、エグい狂気的な表現があって、きっとそれがこの映画の見所で、それが売りなんだろう今回。
しかし、その要素に溺れているというか、そこ頼りというか、「稲垣吾郎にこんなことやらせちゃってるけどどうよ?」というドヤ感を感じるといいますか。
というのも、ラブシーンがやけにじっくりと長くてしつこいので、せっかくその売りでもある大事なシーンが「意味深だけど何の意味も無い雰囲気のあるカット」と同列な印象なんですよね。それで僕は引いてしまったというか、もうずーっと作り手の思惑がチラついてしまってダメでした。
後半の狂気に堕ちてゆく展開も残念ながら中途半端です。全然狂ってもいない。ただちょっと髪型が乱れた稲垣吾郎でした。全然追い詰められていない。全く感情移入できない。全く核心に触れていない。
まだまだ余裕がある、隙だらけの映画でした。