こんな夜更けにバナナかよ / 愛しき実話

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2018年 日本

監督:前田 哲

出演:大泉洋 / 高畑充希 / 三浦春馬 / 萩原聖人 / 渡辺真起子 / 宇野祥平 / 韓英恵 / 竜雷太 / 綾戸智恵 / 佐藤浩市 / 原田美枝子

 

難病をかかえている障がい者の鹿野靖明さんという方がいて、首と手しか動かせない進行性筋ジストロフィーという難病をかかえており、一人では動くこともできずボランティアの人たちに24時間つきっきりで世話をしてもらわないと生きることができない。入院を拒み自立した生活を臨んでいる彼とボランティアとの交流を描いた話。

 

これ、実話らしいんですよね。

もし、自分が鹿野さんのような難病になって体を動かせなくなってしまったらどうしよう。生きることに絶望してしまうかもしれない。鹿野さんのように明るく前向きに生きる自信がない。いや、自分は体が動くじゃないか。いつでもトイレに行けるし、好きな人に会いに行くことだってできる。好きな食べ物もいつでも食べられる。なんならいますぐ外に出てバナナだって買いにいけるのだ。当たり前だと思っていたことは当たり前なんかじゃない。鹿野さんにとって一日一日が命がけだったのかもしれない。日々の生活をもっと大切に過ごそう。生きるのがしんどいなって思ったときこの映画を思い出そう。

なんかすごく前向きな気持ちにさせてくれる映画でした。

 

鹿野さんはボランティアに対して横柄でわがままだった。「背中がかゆい」「あれが食べたい」「これを買ってきて」とリクエストがとにかく多い。最初は嫌な奴だなーって思うんだけど、「ここは自分の家なんだからリラックスして当然でしょ?」とハッキリ言っていて、そっかと納得した。だって自分だって家でのんびりしてるときも同じじゃんと気がついた。障害者だからって自由に生活できないのはおかしいでしょ?という問いかけだった。僕は今まで無意識に「障がい者=可哀想な人」という偏見の目で見てしまっていたことにも気がついた。逆に鹿野さんくらい遠慮せずにズバズバ言ってくれたほうが気持ちが良い。人はみんな対等なんだから。

彼の言葉で一番印象に残ったのは「人は出来ないことのほうが多いんだから、出来るフリなんかするの辞めなよ」と言われたとき。すごく胸に刺さった。たしかに自分も出来ると過信して、出来なかったことなんていくらでもあるし。それを他人に知られるのが怖くて虚勢をはったこともあった。人に任せるとか、人にお願いするのが苦手で、自分でやらなきゃと抱えこんで勝手に悩んだり、もっと人に頼っていいのにそれがなかなか出来ない。それはきっと、他人をちゃんと信用できてないからなんだろう自分は。それこそ信頼関係であり、お互い様なんですよね。「人にやってもらうことも勇気なんだよ」と、身に染みて心に刺さってしまった。

 

そして、お涙頂戴な感動路線ではなく、明るく前向きなドラマにしてくれたのも良かったです。感動路線って難しいですよね。どうしても偽善的になってしまいがちだし。感動の演出が過剰になればなるほど白々しくなっちゃう。

 

なので、鹿野さん役として大泉洋はハマり役だった。彼の人柄が明るく前向きな映画になった理由のひとつだったんだなって。そしてこの映画は高畑充希の役が一番重要だった。ひょっとしたらヒロインが高畑充希じゃなかったらこんなにいい映画にならなかった可能性もある。だって我々観客はヒロインの美咲目線でこの話を見ていたから。美咲ちゃんに感情移入することで色々なことを考えさせられたんだと思った。高畑充希の芯の強い演技の存在が、リアリティと説得力を増した結果になったのかもしれない。

上から目線で申して恐縮ですが。そう思うのです。