打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

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2017年 日本

原作:岩井俊二 / 脚本:大根仁 / 監督:新房昭之

出演:広瀬すず / 菅田将暉

 

先に言っておくと、僕はこの岩井俊二の原作の大ファンです。

ついでに言うと、新房監督のまどマギも大好きでめっちゃハマったし、大根監督の「モテキ」も「バクマン」も大好き。

 

なんだけど、今回の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」のアニメ版、

 

 

 

 

つまらなすぎて震えた。

 

なにがどうしてこうなった。これは一体なんだ。一体なにが起こっているんです?

 

いや、本当は分かっていた。予告の動画を見て「あっ」って思った。地雷臭がハンパなかった。自ら地雷原に裸足で突っ込んでいったのは自覚している。なんならどれだけ酷いのかを確認しに行ったまである。

 

でも、そう思いつつも、ちょっとは期待はしていた。面白くないだなんて信じられなかった。こんだけ凄いメンツのクリエイターが集まっているんだ。きっと僕らを驚かせる仕掛けがあるに違いない。まどマギのときだって、一見表向きは萌え系美少女アニメと思いきや、壮大なSF超大作だったように、きっと今回も実は深い話がかくされているのかもしれない。まるで「君の名は」の二番煎じのような少女漫画のテイストは表向きで、後半あっと驚く超展開が待っているに違いない。

 

そんなことはひとつもなくて、ただただ蛇足。

僕は勝手に地雷原に裸足で全力で突っ込んで自ら爆発して死んだ。

勝手に期待して、勝手にガッカリした。

 

きっと岩井俊二のオリジナル版が完璧すぎるんだと思う。あんな完璧な名作をこれ以上手を加える必要が一秒も無かった。一秒たりとも隙が無かった。たった一言でも台詞が変わっていただけで均衡が崩れ、つじつまがどんどん合わなくなっていった。繊細な作品なんだなって改めて思った。

 

もともとこの岩井俊二の原作は1993年にテレビドラマ用に作られた45分の短編だった。それを今回映画サイズの90分にしたわけだけど、最初の45分はわりとトレースされていたので、後半の45分どうするんだろうって思っていたら、なんか不思議な玉を使って時間を操り、過去に戻る特殊能力で何度もループしてヒロインとの関係をやり直してどうのこうの。

タイムリープってやつですね。

 

もうタイムリープネタは今後10年使用を禁止にしよう。もう飽きたよタイムリープものは。「君の名は」だってギリギリアウトだったよ。あの設定は時をかける少女の専売特許だよ。そういえばまどマギタイムリープものだったね。まどマギは素晴らしかったからいいんだけど。

 

だってさ、45分で完璧に完成されている話に、さらに45分かけてダラダラと何回もやり直すんすよ。

原作の儚くも切なく終わった余韻をぶち壊しまくってタイムリープを繰り返すという地獄の時間だった。

ヒロインは心情とか状況を説明台詞でベラベラ喋りまくり、主人公も熱くなっちゃって、彼女は俺が守るモードが加速。ひたすらイチャイチャ。

主人公の男が熱くなればなるほど僕の心は冷めていった。

 

でも結局、結末は原作と変わってないんだよ。あんなに名残惜しく引っ張っておいて。

なんの時間だったんだよ!潔く別れろや!

 

主人公はヒロインが夏休みで転校しちゃうことを知らないってことがこの作品の最大のエモさな筈である。ヒロインは何も言わずにただ主人公を振り回す、その行動が健気で泣けるわけであって…というか、そんなことを説明することがもう野暮である。

 

もしかしたら、後半のタイムリープの時間は、実は主人公の「こうなればいいな」っていう妄想で、実は最初の別れでヒロインは居なくなっていたっていう夢オチなのかもしれない。だとしたら余計最悪な話だと思うけど。

 

八方塞がりなアニメ化だった。

本当にありがとうございました。