君の名は。
監督・原作・脚本・絵コンテ・編集・撮影:新海誠
なんかすごい話題になってるので見ました。
ちなみに新海誠の作品は「秒速5センチメートル」しか見てません。
今作が話題になってるから代表作のひとつくらい見とこうかと、慌てて「秒速5センチメートル」を最近ようやく見たというくらいのにわかです。
しかし「秒速5センチメートル」は、僕はダメだった。
一応そっちの感想も書いているので、死ぬほど暇なときに読んでください。
「秒速5センチメートル」がダメだった理由は、作者の童貞臭さと厨二病全開だったのが、30代半ばのオッサンの僕には耐えきれなかった。作者のドヤ顔が透けて見えてしまってダメだった。簡単に言うと、気持ち悪い話だなって思った。すいません。
では、今作の「君の名は。」はどうだったのかと。
まず、背景は素晴らしかった。背景はすごいと思う。特に空の色はゾクゾクするくらい美しい。その美しい空に伸びる彗星の軌道が美しかった。きっとこの風景の描写がこの作品で一番やりたかったことなんだろうなと感じた。
彗星だけじゃなくて、見ごたえある風景がたくさんあった。 ノスタルジックでリアルなんだけど、非日常がプラスした独特な世界感だと思う。この背景だけは新海誠のオリジナリティだと思う。
この背景に関しては「秒速5センチメートル」も同じようにいいなって思ったし、今回はさらにクオリティがあがっていた。映画館で見る価値はそこにあった。
なんだけど、やっぱりストーリーがダメだった。ストーリーに穴がありすぎる。
いや、途中までは良かったんすよ。途中までは楽しんで見ていた。設定も面白かったし、最後どうなるんだろうとワクワクして見ていたんすよね。
後半、話が急激に回収モードになってからの予定調和が酷かった。良い話に持っていくためのつじつまの合わせかたが強引すぎた。
この話を簡単に説明すると、
田舎と都会の離れた街にいる高校生の男女が、不定期に体が入れ替わっちゃうんだけど、お互い赤の他人で、次第に惹かれあっていく二人が最終的にどう出会うのか。っていう話なんだけど。
主人公とヒロインが、どうやって出会うのかが一番の肝なわけですよ。
その出会い方が雑だった。
いや、難しいんですよ。どうやったら会えるんだよ…!ってかなり難易度高い設定なんです。絶望的に難しい。二人が出会うのは奇跡に近い天文学的な確率なんだけど。
まあ、言っちゃうと、それは会いますよ最終的には。会うんだけど、なんか納得しにくい会い方なんだよなあああああ。そこはオカルト頼みなんす。古い言い伝えみたいな。神の力的な。
それズルくない?
だって、その出会うことに感動したいのに、不思議な力で済ましちゃうのかとガッカリした。その出会うときやけに説明台詞が多かった。説明台詞が言い訳に聞こえた。
そこに一番期待していたから、拍子抜けしてもうどうでも良くなってしまった。
いやでもこれはファンタジーだから、ファンタジーの世界の人に対して野暮なツッコミなのはわかってる。
しかし、そのファンタジーの世界にも最低限ルールはあると思う。
例えば、「これ夢だからなんでもありなんすよ。」って言って不思議なことがいっぱい起こっても面白くはないでしょ?夢オチほどつまらないものはない。この話は夢オチではないけど、それに近いものを感じて急激に冷めた。
あと、二人が出会っていい感じの雰囲気になってRADWIMPSの歌が流れるんだけど。
それが、3回くらいあるんですよ。後半たたみかけるように。
「はい!ここ泣くシーンだからRADWIMPSの歌どーーん!」が3回くらいあった。3回は多いよ。
終盤、何回も再会するからありがたみがすでに無くなってたし。最後RADWIMPSの歌が流れて「君の名は。」ってデカくタイトルがドーーンって出た時はちょっと笑ったよ。
ちなみにこの最後のタイトルの出し方、秒速5センチメートルでも同じパターンだったからね。
そして、RADWIMPSの歌で一番気になったのが、
主人公がヒロインを探しながら名前を呼んでいるところ。まさに「君の名は。」のタイトルどおりのクライマックスのシーンですよ。シーーンとなって名前を呼ぶ声だけが響く緊張感のある場面。息をのんで見ていたんだけど。
その主人公の声に被せぎみで野田洋次郎のアカペラのバラードの歌が始まったんすよ。あの編集はひどいよ。あれは台無しだよ。タイミングおかしすぎるよ。野田洋次郎の歌が邪魔すぎる。野田洋次郎が逆にかわいそう。あそこで本当に冷めた。
RADWIMPSは全く悪くないんです!むしろ素晴らしい主題歌だった。しかも何曲も。使い方に問題があったと思う。映画的に。
そもそも他にもストーリーの設定に穴は多かった点がいくつかある。
・お互いの個人情報を交換する方法なんていくらでもあったと思う。
・ヒロインの街を探す情報が自作のデッサンの絵だけってなんなの。
・主人公の男がヒロインの街の場所を知らないのはそもそもおかしい。(設定上有名になってる筈の地域なんだから。)
その辺のつっこみどころは「秒速5センチメートル」でも一緒。どうも新海誠は主人公に無謀な行動をさせたがる。あてもなく遠くに行かせて途方に暮れている自分に酔うという演出が多い。
それは奇跡じゃなくてただ計画性がないだけだから!マッチポンプなんだよ!
でも、こんなストーリーにもいいところも少しはあった。途中のミステリー要素は良かった。あれはゾクッとした。純愛映画だと思ったらホラーだったという、サスペンスの路線をもうちょっと活かせば、登場人物の異常な行動も「サイコパスだから」で片付けられて多少は解決するかも。
いや、いい話だったんすよ。いい話になった筈なんだけど、話が盛り込みすぎでゴチャゴチャってなってたのが勿体ないなあって思った。
たぶん、どうしても細田守監督の「時をかける少女」と「サマーウォーズ」と比べて見ていたからなんだと思う。特に時をかける少女との共通点が多かった。タイムリープするしね!
そういえば後半、ヒロインが現状をなんとかしようと必死に走り、坂で転んで傷だらけになって泣くシーンとか、時かけのオマージュなんじゃないかって思ったわ。
「時をかける少女」はストーリーに一本スジがちゃんと通っているから、後半のカタルシスで、主人公に感情移入して泣けるんですよ。
「君の名は」は、後付けが多くて詰め込みすぎ。つぎはぎだらけ。どこにピークを持って行きたいのか分かんなくなってる。簡単に言うとしつこい!
「もっとこうなれば良かったなあ」と思い描いたストーリーは、結局どうしても細田守の時をかける少女になってしまう。 じゃあ、時かけでいいじゃんって思っちゃう。
もっと言いたい事がいっぱいあった気がするけど、僕からは以上です。