監督:ダニー・ボイル
出演:マイケル・ファスベンダー / ケイト・ウィンスレット / セス・ローゲン / ジェフ・ダニエルズ / マイケル・スタールバーグ
2013年にもスティーヴ・ジョブズの伝記映画があったが、こっちは2016年のダニー・ボイルのほう。
この映画、構成が大きく3つに分かれていて、1984年のMacintoshのプレゼン直前、1988年のNEXTのプレゼン直前、1998年のiMacのプレゼン直前の三部構成になっていた。しかし肝心のプレゼンの風景は一切映さずに直前でバッサリと切るという。
この編集と脚本が斬新で面白いと思った。スティーブジョブズにとって最もカタルシスであるプレゼンはあえて映さない。潔よいと思った。
スティーブ・ジョブズの経歴はみんな知っているよね?という前提だった。
プレゼンの直前にスタッフと喧嘩している様子だけをクローズアップするという。それが3回続く。それが1984年のときも1988年のときも1998年のときも同じようなことで喧嘩しているのだ。
天丼ってやつだ。「天丼」というのは繰り返すことで笑いが起こるお笑いの手法。「またあいつがきて同じ事で揉めてる…」という。
その彼らの喧嘩の内容が天才すぎて凡人にはピンとこない。神々の喧嘩。なんか遥か彼方の雲の上で喧嘩してる。あれ、なんか光った?雷か?みたいな。
とにかくジョブズが天才すぎて頭おかしい。いくら天才でも人間性が欠落しすぎている。こんな人が会社の上司だったらノイローゼになる。一切妥協が許されない。気が狂いそうになるくらい細かくて神経質。
しかし、スティーブジョブズの信念は正しかった。それはいまの時代のアップル製品を見ればわかる。
驚いたのは1984年のMacintoshの時代から互換性を無くすることにこだわっていたことと、それについて揉めていたことである。アップルの唯一の弱点がその「互換性の無さ」だ。他の製品を利用できない。カスタマイズできない。融通が利かない。傲慢さ。
ジョブズは「完成されたボブ・ディランの歌詞に、誰かが歌詞を付け加えた歌を聴きたいと思うか?」と言っていた。Macintoshは芸術作品だという。
そのこだわりがアップル製品が美しい理由でもある。アップル製品はスティーブ・ジョブズの人間性そのものが反映された製品なのかもしれない。
やっぱりアップルはジョブズがいたからこそいまのアップルがあるのだと改めて実感した。