フォックスキャッチャー
監督:ベネット・ミラー
出演:スティーヴ・カレル / チャニング・テイタム / マーク・ラファロ
実際に起こった殺人事件を題材にした映画。「事実は小説よりも奇なり」という言葉がふさわしい。どうしてこうなった。結末が不条理すぎて思わず「へっ?」と声が出た。
見終わったあとの余韻が、余韻がすごくてもう。
アマチュアレスリングの金メダリストの兄弟と、彼らに投資をする金持ちのパトロン、その3人の間で殺人事件が起こってしまうという話。
まずそのシチュエーションが珍しい。「レスリングの金メダリスト」と「殺人」って全然結びつかない。なんで殺人事件が起こったの?という単純な疑問をもって見る映画なんですけど。
僕は、「監督がカポーティのベネット・ミラーだから」という理由だけでこの映画に臨んで、誰が誰を殺したという前情報も入れずに見たので、最後は僕にとって衝撃の結末だった。
えっ、そこで殺しちゃうの!?
人の感情なんて本人にしか分からないのかもしれない。承認欲求なんてそりゃあ誰にでもある。人に認められることってそれ相応の努力が必要で、お金でなんか買えない大切なものなのだ。
いくら努力しても誰にも認めてもらえない淋しさは、僕にも経験があるから気持ちがよく分かる。人に認められないって孤独だ。
だからって人を殺しちゃうっていうのは全く理解できないのだけど、孤独の淋しさは僕にも分かる。そんな内面の淋しさという部分で「分からないけど分かるぞ…!」と見終わったあとにジワジワと切なさが充満してしまった。
ベネット・ミラー監督はカポーティのときもそうだったのだけど、役者の怪演の引き出し方が素晴らしい。無駄がなく削ぎ落とした緊張感のある映画だった。ジットリと引き込まれてしまった。すごい映画。