読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

家に帰れなくなってヒッチハイクした話

僕が18歳の頃の話なので、かれこれ18年前の話です。

家に帰れなくなって、はじめてヒッチハイクした話を思い出しながら書こうと思います。あの日のことは鮮明に事細かく覚えています。

 

当時僕は札幌に住んでいました。高校を卒業し専門学校に入学後、登別の実家を出て、はじめての一人暮らしをはじめたばかりでした。ゴールデンウィークになり一人暮らししてはじめての連休。まだ札幌に友達が一人もいなかった僕は暇をもてあましていました。

自転車に乗って札幌の街を散策しよう。知らない街を探検だ。その日は天気の良い日でした。どこを走っても新鮮な景色にテンションが上がっていました。そういえば、海に沈む夕日って見たことがないなあと、なんとなく海に向かってました。

僕の地元の登別は夕日は山に沈みます。生まれてこのかた海に沈む夕日はテレビでしか見たことがありませんでした。

札幌から北西を目指して海にでたら夕日が見れるのかな。

そんな単純なことを思って、北西に向かって走っていました。

時刻は、昼の12時頃。

 

それではここで、北海道の土地勘がない方の為に、地図でご説明します。

 

f:id:inu_suke:20151103030748j:plain

 

札幌から北西に向かうと小樽に到着します。ひとまず小樽に海があります。30kmくらいの距離です。東京で例えると渋谷から横浜くらいの距離です。

ただその途中は山道です。山しかありません。走り屋が峠を攻めるようなスポットが続くのみです。厳しい坂道ばかりです。なんとか汗だくで山を越え、谷を越え、小樽に到着したのが夕方の16時頃。

小樽に到着して、海にたどり着いたのはいいのですが、肝心の太陽は山に向かって沈んでいました。

 

ここで再び地図をご覧ください。

 

f:id:inu_suke:20151103031759j:plain

 

半島の先端に行かないと海に沈む夕日は見れないようです。もう時間と距離的に自転車では間に合いません。小樽から半島の先までは60kmくらいです。

そこで自転車を小樽駅に置き、バスで向かうことにしました。はじめての土地でどのバスに乗れば良いか迷いながら、なんとか半島の先に行くバスに乗り込みました。

バスはひたすら山道を走ります。僕は焦っていました。窓からずっと太陽の位置を気にしていました。いまどこを走っているのかなんてサッパリです。途中、民家がチラホラあるくらいで、景色は山と森だけが永遠続きます。

すると、山や森ばかりだった景色が変化した瞬間がありました。目の前に海が広がり、真正面の位置の太陽がいままさに海に沈むところでした。 

僕は慌てて停車ボタンを連打し、急いでバスを飛び降り、海に向かって走りました。

 

間に合ったあああああああ!!!

 

僕はしばらく海と夕日を眺めながら達成感の余韻に浸っていました。完全に自分のロマンチックさに酔っていました。若いとは罪です。僕のロマンチックな青春はこの瞬間がピークでした。

太陽にほえろのオープニングみたいなデカイ夕日を期待していたから、実際は思ったより小さくて「あ、こんなもんか。」って思ったけど、とにかく見れたという事実だけで満足していました。

太陽が完全に沈むまで見ていました。ここまで苦労して来たから名残惜しい気持ちです。沈み終わったので、腰を上げ「さ、帰ろう」と、さっき降りたバス停に戻りました。バス停に戻り時刻表を見て唖然としました。

 

 

 

最終のバスが無い。

 

いまの時刻は18:30

帰りのバスは18:00が最終。

 

 

 

ウソだろ…!?

 

田舎すぎてバスの本数が少なかったのです。僕の地元の登別もたいがい田舎ですがさすがにバスは22時くらいまでは走ってます。

それでも僕は事態の深刻さにまだいまいちピンときていません。

ここで再び地図をご覧ください。

 

f:id:inu_suke:20151103032923j:plain

 

こんなところにいて帰れなくなったのです。ちなみに当時の僕は地図なんてもってませんし、もちろんiPhoneグーグルマップみたいな便利なアプリなんてありません。自宅の札幌までおよそ100km。東京で例えるなら渋谷から箱根くらいまでの距離です。

持ち物は、財布(所持金3000円) 携帯(ガラケー)タバコ。

以上です。

服装は、上は半袖のTシャツ一枚、下はジーパンにスニーカー。

5月とはいえ、北海道の5月はまだまだ寒いです。夜になると平気で10度を下回ります。東京の4月より寒いです。辺りはすっかり暗くなってきました。ようやく事態の深刻さを実感してきました。周りを見渡すと、海、崖、森、山、道路。

なんにもありません。

 

イメージとしてはこんな感じです。

f:id:inu_suke:20151103042803p:plain

(写真はイメージです。)

 

火曜サスペンス劇場「湯けむり秘境殺人事件」みたいな刑事ドラマで、犯人が最後に自供するシーンに使えそうなロケーションです。

 

灯りを探すと、遠くのほうにボツポツと民家のような光りが豆粒のように見えます。とにかく街を探さないと…。ここがどこかも分かりません。

30分くらい歩いたでしょうか、徐々に民家が何軒か見えてきました。そこで幸運にもお店が開いていました。個人経営の食料品や生活雑貨などが売っている小さな商店でした。店に入って「すいませ〜ん」と声をかけると、奥から50代くらいのオバちゃんが出てきました。

 

「はい、いらっしゃい。」

 

「すいません。このへんで一番近い駅ってどこにありますか?」

 

「駅かい?このへんには無いよ?歩いて?歩いてなんて無理よ。この方向に余市駅があるけど歩いたら3時間くらいかかるんじゃない?」

 

オバちゃんが駅の方向だと指差した先は真っ暗闇の山しかありません。

 

「あ…そうですか、ありがとうございます…。」

 

絶望した。

店の前にバス停がありベンチがあったのでとりあえず座って落ち着こう。もう一度バスの時刻を確認するけど何度見てもバスは無い。時計を見ると19時をまわっていた。寒い。随分冷え込んできた。さらに腹も減ってきた。そういえば昼間に小樽の手前でラーメンを食べたきりだった。

もう一度商店に入り、あんぱんとお茶を買う。

 

「あんたどっから来たの?」

 

オバちゃんがお釣りを渡しながら聞いてきました。

 

「札幌です。」

 

僕はオバちゃんに自転車で小樽まで来たことや、ここまで来た経緯を説明しました。心の中で、オバちゃん助けてくれないかな…。車で駅まで送ってくれたり…。

困った顔をした僕を察したのかオバちゃんは僕に斬新な提案をしてきました。

 

「この先にね、国道があるから。そこならここより車が走ってるから。手をあげて乗せてもらいなさい。この先が国道よ。」

 

つまり、ヒッチハイクして帰れということです。

オバちゃんがこの先が国道よ。と指さす先は真っ暗闇の山道しかありません。

 

「あ、はい…。わかりました。ありがとうございます。」

僕はあんパンをかじりながら国道に向かいました。

 

f:id:inu_suke:20151103043138p:plain

(写真はイメージです。これが夜になって真っ暗な状態。)

 

15分、いや、30分ほど歩いたでしょうか、オバちゃんが言う「国道」らしきものが見えてきません。というかどこが国道なんだ? え、ひょっとしてもうここが国道なのかな? 田舎の場合、国道という名称だからといって太い道路とは限りません。山道のような周りは山に囲まれた峠が続きます。

いまのところ車は一台も走ってません。

とりあえず歩く。真っ暗な道を歩く。街灯も灯りもなく真っ暗。

すると、後ろのほうから一台の車が来ました。

 

「き、来た!!?」

 

僕は力の限り大きく両手を振りました。きっと必死の形相だったに違いありません。走って来た車は僕を大きく避けるようにギューーーンと加速して、逃げるように遥か遠くに消えました。きっと、こんな山道に人が歩いているなんて思っていなかったんでしょうね。ドライバーはさぞかし怖かったんだと思います。そりゃあそうです。こんな怪しい奴、自分なら絶対に乗せたくありません。幽霊にでも遭遇したと思われても仕方ありません。

 

その後も、10分おきくらいに1台、2台と車は通りましたが、どの車も止まってくれません。走り去る車を見ながら僕は猿岩石のことを考えていました。当時1998年は、ちょうど電波少年というTV番組が流行っていた時代でした。猿岩石がヒッチハイクで香港からイギリスまで行ったあの伝説の番組です。

猿岩石ってすごいことやってたんだな…。

 

また1台車がきました。通り過ぎたので、またダメか…と思ったら50mくらい先で止まっていました。僕は車に向かって全力で走りました。車にはおじさんが2人。「乗っていいんですか?」と聞くと、ドライバーのおじさんはぶっきらぼうに親指をクイっと後部座席にむけながら「いいよ。」と。

 

助かった…。

 

車内で、事の経緯を説明しました。おじさん2人は笑っていました。おじさん達は釣りの帰りだったそうです。小樽駅まで乗せてもらいました。「本当にここでいいの?札幌までじゃなくていいの?」と親切に言ってくれましたが。自転車があるので大丈夫ですと、おじさんにお礼を言って別れました。本当にありがとうございました。一生忘れません。

 

で、そこから自転車で札幌に帰ろうと思ったけど、僕にはもうそんな気力はありませんでした。小樽駅に行くと、まだ札幌行きの終電が残っていたので、電車に乗って札幌に帰りました。

自転車は、後日電車に乗って行って回収しました。

 

それでは最後に、僕が夕日に向かって自転車をこいでいたときに脳内再生していた曲がBlankey Jet CityのPUNKY BAD HIPという曲なんですが、

「夕日をバックに彼は言った。俺たちの国境は地平線さ。」の部分の歌詞が永遠に脳内リピートしていたので貼っておきます。