バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
監督・脚本;アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(21グラム / バベル)
出演:マイケル・キートン / エドワード・ノートン
ゴールデングローブ賞の主演男優賞にマイケル・キートンが受賞。
アカデミー賞は、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門獲得。
その他にも世界中からたくさん賞を獲得したことで注目されている作品らしい。
あらすじ:
主人公はバードマンというアメコミヒーロの映画俳優だった。「バードマンの人」としては有名だがそれも20年以上前の話。俳優として落ち目になってしまった自分が再び脚光を浴びるためブロードウェイの舞台俳優として再起をはかるというブラックコメディ。
これめちゃくちゃ面白かった。今年の暫定1位、いや、生涯のベスト10に入るくらい。観ている途中からずっと「あ、この映画やばい」とニヤニヤが止まらなかった。
主演のマイケル・キートンは、ティム・バートン監督の初代バッドマンの俳優の方です。バードマンというヒーローはバッドマンのオマージュであり、つまりこの映画のテーマはマイケル・キートンそのものなわけです。
マイケル・キートンとエドワード・ノートンの二人の存在だけで永久に観ていられる。二人ともいい感じに渋く老けて、ちょっと枯れた感じになっているんだけど、2人の狂人さが隠しきれていない。ギラギラとした怪演技をする二人の対峙にゾクゾクした。
序盤、エドワード・ノートンが出てきて理詰めで畳み掛けるよう喋りまくってて、アメリカン・ヒストリーXのときのエドワード・ノートン全快だった。
あと、カメラワークが特殊で、ずっとワンカットなんですよ。2時間ずーとワンカットの長回しなんです。カメラがずっと出演者を追っているので、まるでそこにいる錯覚になる。より主人公に感情移入したし、ここまで映画の中に入り込んだ気分になったのははじめて。見終わって映画館を出てもしばらく余韻が抜けなかった。こんな映画体験はじめて。
正確にはワンカットに思わせるように編集してるらしいんだけど、編集の切れ目がまったく分からなかった。革新的な技法だと思った。
カメラマンがエマニュエル・ルベツキという人なんだけど、映画・ゼロ・グラビティでも冒頭の13分間のワンカットのシーンが素晴らしいと話題になったらしい。今回はそれが2時間続くという。
普通、長回しのワンカットが延々続いたらダレる筈なんだけど、全然ダレない。むしろ軽快なテンポで、かつワンカットの緊張感が続く。なので作品全体が力強い。
そんな永遠ワンカットなので、出演者のプレッシャーは半端なかっただろうなあと思った。失敗したらいったいどこからやり直すのかとか、その場で演劇の舞台を生で見ているような感覚なので。
なので撮影と脚本を事前に完璧に作り込まないと不可能だと思う。とことん計算されて作られた映画なのかもしれない。
そんななかに、マイケル・キートンとエドワード・ノートンという怪演役者が2人もいるのだからそれは凄い映画になるわけですよ。
とにかく主人公に感情移入した。主人公がひたむきに頑張ってる姿を見て目頭が熱くなった。決してお涙頂戴とか感動を売りにしている映画ではなく、むしろ皮肉いっぱいのブラックコメディなのに泣けた。
この映画は、見終わったあとの余韻が解けるのに時間がかかる。見た直後なのに映画館に戻ってもう一回見たいくらい余韻がまだ残っている。