誰も知らない

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主演の男の子が当時14歳で、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を取ったらしい。

それだけの予備知識で見たら度肝ぬかれた。

 

監督は是枝裕和。1988年に実際に起きた巣鴨子供置き去り事件を題材にした映画らしい。ドキュメントタッチでものすごくリアルだった。

 

すごい映画でしたよ。こんな映画はじめて見た。

 

母親が育児放棄して4人の子供をアパートに半年くらい放置しちゃうんだけど、子供達はなんとか必死に生きるという。

彼らは母親がすべてだった。母親が神のような存在になってしまっている。2DKのアパートが彼らの社会で、それなりに秩序があった。

長男が弟と妹達を世話をする。晩ご飯の支度。お金の管理。家賃の振込み。掃除や洗濯は妹がちゃんとやる。

 

しかし、子供達は学校に行った事がない。

 

きっとこういう生活しか知らないのだと思う。外の世界を知らずに、母親の都合で勝手に自分たちで生きていくように育てられたのかもしれない。社会を知らない彼らは、あまりにも純粋で、母親が帰ってくることだけが唯一の楽しみのような生活。なんて残酷なのか。

 

母親はたまに帰ってきてお金をくれる。それでなんとか生活していた。

しかし、ついに母親は帰ってこなくなってしまった。

金も底をつきた。水道もガスも電気も止められた。家賃の催促もきてる。飲み水は近くの公園で、トイレも公園で、食べ物はコンビニの廃棄を貰う。

 

もう絶望しかない。

 

家はあるけどホームレスみたいな生活である。

12歳の子供には酷すぎる。

 

という映画だったんだけど、

どう考えても「母親が悪い」って感想になると思う。しかし、母親を頭ごなしに責める気分になれないのは、子供達を見ていると、長男が妹に対しての優しさとか、母親からの愛情があってこその優しさを感じたり、ご飯の炊き方とか洗濯の仕方は母親に教わったんだろうなとか想像すると、母親だけを責める気になれなかった。

絶望だけではなく、兄弟愛や親子愛という希望も随所に…

いや…やっぱり母親が無責任すぎる。やっぱり子供達がかわいそう。

 

色々考えさせられる映画だった。