リバーズ・エッジ

f:id:inu_suke:20180220233046j:plain

2018年 日本

原作:岡崎京子

監督:行定勲

出演:二階堂ふみ / 吉沢亮

 

岡崎京子原作の漫画「リバーズ・エッジ」が実写映画したというので見に行ってきた。

90年代のサブカルど真ん中の漫画で、当時10代だった僕はこの漫画には思い入れがあった。とにかく暗く重く、うんざりするくらい超絶バッドエンドなんだけど、僕はこの漫画が好きだった。枯れた河川敷と、汚い川と、工場があるロケーション、たぶん大田区とか川崎とかあのあたり。こういう殺伐とした風景っていいですよね。

で、実写版リバーズ・エッジ。完璧なトレースだった。完全再現。ここまで再現してくれると嬉しい。素晴らしい実写化。すごい。

 

当時のファッションとかあんな感じだし。もちろん電話は携帯電話じゃなくて公衆電話。友達に電話するときは実家の家電にかけていたあの感じとか懐かしい。そういえば俺も実家に住んでいた時、姉の友達から家電にかかってきた電話を取ったとき内線で姉にまわしていた。懐かしい昭和感。やたらみんなタバコを吸っているとか、今の時代タバコ自体が古い文化になってしまっているのかもしれない。当時の高校生はみんな家族に隠れて部屋で吸っていた気がする。主人公が自分の部屋で窓を開けてタバコを吸っていて、吸い殻を大きな瓶に入れてベットの下に隠していた。その大きな瓶には大量の吸い殻が溜まっていた。きっとある程度溜めてから捨てているのだろう。家族にバレないように。僕もそうしていた。絶対バレてるけど。そんな細かい小道具にまでその当時の94年の空気感を再現していた。

この懐かしい感じ、いまの10代に伝わるだろうかって思った。それを思ったときに自分はオッサンになったんだなと実感した。そうか、これはもう時代劇なんだ。「ALWAYS 三丁目の夕日」が60年代の日本のノスタルジーを表現していたのと同じで、これは90年代のノスタルジーに浸る映画なのかと。

この漫画の世界感だけじゃなく、当時の94年の日本を完璧に再現していた映画だった。

 

実写でここまでリアルに再現されると、この漫画のエグさがより生々しくてすごい。

SEXと過食と暴力と死体を交互に見せられて、ずっと不快感と罪悪感が畳み掛けられる。あらためてどんよりした。そうだ、この漫画はこういう世界だった。錆びた鉄の匂いと、冬の寒さと、血の味がする漫画。

 

登場人物も全員似ていた。まるで漫画から飛び出してきたかのよう。出演者がみんな素晴らしくて完璧だった。主演の二階堂ふみはもちろんだし、まさか二階堂ふみが脱ぐとは思ってなかったのでビックリもしたんだけど、特に目を引いたのが吉川こずえ役のSUMIREだった。このSUMIREって人、誰か知らないけどめちゃくちゃ雰囲気ある人だなーと、家に帰って調べると浅野忠信Charaの娘だって知ってすべて納得した。そりゃあ雰囲気あるわ。

 

しかし、1点だけどうしてもダメな部分があった。

なぜか、登場人物が一人一人、インタビュー形式で語っているシーンが随所に差し込まれていた。これは原作にはない脚色した演出だった。キーとなる登場人物が自分の心情を語っているんです。「どんな気持ちですか?」って。しかもインタビュアーは行定勲監督。物語をわざわざ説明させてるんですよ。90分では収まらない部分を補ったってこと?

完全に蛇足だった。そのインタビューが誰目線なのか分からない。そのシーンが入るたびに現実に引き戻される感じがして冷めた。それさえなければ完璧だった。勿体無い。