ムッシュ・カステラの恋

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2001年 フランス

監督:アニエス・ジャウイ

出演:ジャン=ピエール・バクリ / アンヌ・アルヴァロ

 

カステラという中堅会社の社長のおっさんの恋の話。

カステラさん、ドラム缶を製造する工場の社長なんだけど、豪邸に住んでて、綺麗な奥さんもいるし、ボディーガード(2人も)までいる。だいぶ金持ってそう。

とりあえず奥さんがすげえ感じ悪い。犬をいつも連れてて、その犬がやたら人に噛みつくんだけど奥さんいつも逆ギレ。カステラはいつも他人事。会社でもコンサル任せ。なんかあんま仕事してなさそう。社長ってこんな暇なのか? とにかくこの夫婦全然話が通じねえ。しかし金だけは持ってそう。

そんなカステラが、姪が出演する舞台のお芝居を見に行くんだけど、(その舞台を見に行くときも面倒くさそうだし、姪に「お前は演技が下手だ」とか言うし、マジでデリカシーなさすぎ。)そこに出ていた舞台女優のクララに一目惚れするというところから話が急に加速した。

 

このカステラ、なんというか、一言で言うとバカなんですよ。

病的に空気が読めない。アスペすぎてすごい。

 

オッサンが恋をして暴走してる姿を楽しむ映画。

恋は盲目である。人は恋をするとこんなにも狂ってしまうのかと。

 

舞台の楽屋に挨拶に行ったときの周りの「あんた誰?」というあの独特な気まずい空気にゾクゾクした。しかも舞台の打ち上げにまで参加するという鉄のハートを持っているんだけど、そんなアウェーの現場でのカステラは、テンションが上がったのか知らないけど、下ネタと上から目線の舞台批評ばっかで、「なんだこいつ…」という冷え切った空気になっててもうほんと辛い。頼むから飲み会で誰にも相手にされなくて孤立するあの気まずさを疑似体験させるのはやめろ。しかもカステラ、こっそりテーブルの会計をみんなの分払っていた。飲み会で知らないオッサンがいきなり参加してきて、全然馴染んでないのに会計だけ払って帰りやがった。まじ辛すぎ。俺ならもう二度とその飲み会参加できないし家で一人で泣いてる。

このオッサン、金だけは持ってるけど、人として何かが足りない。

 

クララが「わたし、口髭キライなのよね。」と言っていたのを聞いて、その次の日に髭を剃ってドヤ顔で現れて、ポエムのようなラブレターを読んで聞かせるところがハイライトなんだけど、もうカステラのドヤ顔がたまらない。とにかくカステラの哀愁が半端ない。

 

人間描写がとてもリアルだった。特に人間関係の気まずさの描写がリアルで胸がヒリヒリした映画。フランスのセザール賞主要4部門を受賞している作品らしい。滅茶苦茶面白かった。